
SaaSのマーケティング戦略、主な14の施策、優先順位の付け方を紹介
2026/01/24
SaaS(Software as a Service)は、月々の支払額が低く抑えられ、導入のハードルが低いこと、ツール導入によって業務効率化や業績向上が望めることなどから、多くの企業で様々なSaaSが導入されています。
ただ、海外だけでなく国産SaaSもどんどん増えており、SaaS企業が競争優位を確立するためには、従来とは異なる独自のマーケティングアプローチが不可欠です。
本記事では、SaaSの成り立ちやマーケティング戦略の具体的な施策、よくある失敗とその対策などを詳細に紹介します。
そもそもSaaSとは?
SaaS(Software as a Service)とは、インターネット経由で必要な機能を利用するソフトウェアの提供形態のことを意味します。米国国立標準技術研究所(NIST)では、 SaaSそのものを「クラウドインフラ上で稼働するプロバイダーのアプリケーションを、クライアント端末のWebブラウザ等から利用する形態」と定義しています。
【参考文献】https://csrc.nist.gov/pubs/sp/800/145/final
SaaSという概念自体は、突如現れたものではなく、計算資源の共有という1960年代のアイデアから徐々に進化してきました。
1960年代、インターネットの普及に伴い、事業者が用意したサーバー上のアプリケーションを回線経由で企業に貸し出す「ASP」モデルが登場しました。しかし当時は通信速度の遅さや、顧客ごとにシステムを用意する都合上、導入までにかかるコストが非常に高く、「ASP」モデルは、あまり広く普及しませんでした。
その後1999年にMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏が設立したSalesforce(セールスフォース)は、1つのシステム基盤を複数の企業が安全に利用できる仕組みを構築し、低コストで常に最新のソフトウェアを利用できる環境を実現しました。これを機に、インターネットを通じてソフトウェアを利用するSaaSという形態が、企業の間で広く普及していきました。
2000年代には、AWS(Amazon Web Services)の普及を筆頭に、より一層「SaaS」という用語が私たちの生活に定着するようになりました。AWSの登場は、インフラ構築のハードルを劇的に低下させ、「SaaS」は、サブスクリプション型という新しい提供形態であることのみならず、導入コストが低く、運用効率が高いという観点で多くの企業に親しまれるようになりました。
ソフトウェアが「所有するもの」から「借りるもの」へと変化し、サブスクリプション型が定着した現在、解約がいつでも可能な「借りる」SaaSにおいては、売った瞬間はスタートラインに過ぎません。そこで、「売って終わり」のマーケティングから、「使い続けてもらうためのマーケティング」への転換が求められるようになりました。
2010年代後半に入ると、SlackやZoomに代表される「ユーザー自身が自ら試して価値を実感し、有料プランへ移行する」というプロダクト主導型の成長モデル(PLG)が台頭しました。従来の営業による売り込みに頼らないこの仕組みは、顧客の導入ハードルを下げるだけでなく、SaaS企業の営業・獲得コストを劇的に削減する大きな転換点となりました。
「売った瞬間がスタートライン」となるSaaS時代だからこそ、プロダクト自体の提供価値を高めつつ、顧客との長期的なパートナーシップを育むカスタマーサクセスの要素を含んだ「ファンマーケティング」を始めとして新たなマーケティング戦略の重要性が、今後一層高まっていくでしょう。
SaaSのマーケティング(SaaS Marketing)とは?
続いてSaaSのマーケティング活動の役割や、従来のマーケティング活動との違いを解説します。
SaaSの普及に伴い、マーケティングの役割も従来の「パッケージ製品(オンプレミス)を売り切るための施策」から大きく変化しました。利用期間に応じた課金モデルへの移行により、継続的な価値提供と使い続けられる仕組み作りが不可欠となりSaaS・ソフトウェアにおけるマーケティング活動は今後も重要性の増す領域です。
SaaSのマーケティング活動の役割
SaaSマーケティングは、単なるリード獲得だけでなく、顧客のライフサイクル全体を通じた価値提供を目的としています。具体的には以下の3つの役割を担います。
1.認知獲得とリード創出
潜在顧客にサービスの存在と価値を認識してもらい、興味を持ってもらうための活動です。SEO、コンテンツマーケティング、広告などを通じて、ターゲット市場におけるブランド認知度を高めます。
2.リード育成と商談創出
獲得したリードに対して、メールマーケティングやウェビナーなどを通じて継続的に情報を提供し、購買意欲を高めていく、リードナーチャリング(顧客育成)が効果的です。
1995年に米国 テキサス A&M大学で発表された「リレーションシップ・マーケティング」が原点となるBtoBの商習慣のなかでは比較的新しい考え方と施策です。
参考文献:Relationship marketing of services—growing interest, emerging perspectives
特にSaaSマーケティングの場合、購買に係る関係者が多いことから、無料トライアルや製品デモを活用した体験型のリード育成が効果的です。
3.顧客定着とアップセル
SaaSビジネスの特性上、契約後のリテンション(顧客維持)とアップセル・クロスセルがLTV(顧客生涯価値)の最大化に直結します。オンボーディング支援、活用促進、新機能の紹介など、カスタマーサクセスと連携した活動が重要になります。
また直近では、導入企業向けにエクスパンションやNRR(売上維持率)を目的とするカスタマーマーケティングも活発になってきています。
4. 顧客単価・LTVの最大化
SaaSマーケティングでは、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の継続利用を促し、1社あたりの売上を高めることも重要な役割です。特にSaaS業界では、類似するサービスへの乗り換えや、利用頻度の低下による解約が生じる可能性があります。そのため、顧客の利用状況やニーズに応じたマーケティング施策を展開し、継続利用を促すとともに、アップセルやクロスセルにつなげることが重要です。これにより、顧客単価の向上とLTVの最大化が期待できます。
従来のマーケティングとSaaSのマーケティング活動の違い
従来型のマーケティングとSaaSマーケティングには、以下のような本質的な違いがあります。
収益モデルの違い
従来のフロー型ビジネスでは、初回購入時に収益の大部分を獲得します。一方、SaaSはサブスクリプション形式のストック型ビジネスであり、契約後も継続的に収益を生み出すため、長期的な顧客関係の構築が不可欠です。
販売プロセスの違い
SaaSでは、無料トライアルやフリーミアムモデルを活用した「PLG(プロダクト主導の成長)」を導入する企業も多くあります。顧客は購入前に実際のプロダクトを体験できるため、上流のマーケティングと下流の製品体験価値の向上が密接に結びついています。
KPI・指標の違い
従来型では売上や新規顧客数が重要指標でしたが、SaaSではMRR(月次経常収益)、ARR(年間経常収益)、チャーンレート(解約率)、ユニットエコノミクス(LTV/CACで算出)など、継続性と収益性を測る指標が中心になります。
また上記のユニットエコノミクスは顧客あたりの収益性と経済性を示す指標であり、生涯顧客価値と顧客獲得単価で割って算出します。一般的に3倍以上あれば投資回収が順調かつ健全な状態であり、1未満であると顧客を増やすほど赤字になることを示し、収益健全性が低下しています。
顧客タッチポイントの違い
従来型のマーケティングでは、主に購入に至るまでが顧客との接点でした。そのため、購入後に持てる顧客との接点は非常に限定的なものでした。一方でSaaSでは、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスの各部門が一体で顧客ライフサイクル全体を最適化する必要があります。契約後もマーケティングが顧客エンゲージメントに関与し続けることが特徴です。

SaaSのマーケティング活動で押さえるべき重要指標
主要KGI(Key Goal Indicator / 重要目標達成指標)
MRR(Monthly Recurring Revenue / 月次経常収益)
毎月定期的に得られる収益です。SaaSビジネスの健全性を測る最も基本的な指標であり、新規MRR、アップセルMRR、ダウングレードMRR、チャーンMRRに分解して分析します。ビジネスの健全性や成長の勢いをリアルタイムにかつ、迅速に把握できるという長所を持つ一方で、季節変動や大型案件、相互契約案件の解約など、短期的な影響に左右されやすいため、数値の見方には注意が必要です。
MRRを分析する際は、その内訳を「Net New MRR = 新規MRR + 拡大MRR - 解約MRR - 縮小MRR」に分解して追うことが不可欠です。
ARR(Annual Recurring Revenue / 年間経常収益)
年間の経常収益で、MRRを12倍した値です。企業規模や成長率の評価、投資判断に用いられる重要な指標です。年間規模での収益性や中長期的な事業規模を視認性高く把握できるという長所を持つ一方で、MRR同様に短期的な顧客離脱やBIやCRM、スプレッドシートへの反映漏れなどが起きると急激な成長の変化を見落としやすいため、数値の見方には注意が必要です。
LTV(Life Time Value / 顧客生涯価値)
一人の顧客が契約を開始してから解約するまでの総収益のことです。計算式は「平均顧客単価 × 平均継続期間」で、マーケティング投資額を判断する基準となります。顧客1社あたりの生涯価値を可視化し、攻めの獲得投資(CAC)の基準値を明確に設定できるのが利点ですが、データが少ない創業期などは過剰な試算に傾きやすい側面もあるため、数値の取り扱いには留意しなければなりません。
チャーンレート(Churn Rate / 解約率)
特定期間内に解約した顧客の割合です。月次チャーンレート1%の差が、1年後には大きな収益差となって現れるため、極めて重要な指標です。サービスが顧客に提供できている本質的な価値や満足度をダイレクトに映し出すメリットがあるものの、解約率という数字だけを鵜呑みにすると金額を基にした損失規模を見誤るリスクがあるため、数値の背景まで慎重に見定めることが重要です。
併せて読みたい記事:解約率(チャーン)を下げるには?SaaSで解約が起きる原因と防止策を解説
主要KPI(Key Performance Indicator / 重要業績評価指標)
CAC(Customer Acquisition Cost / 顧客獲得コスト)
一人の顧客を獲得するためにかかったマーケティングとセールスのコストです。LTVとのバランスが重要で、一般的に「LTV/CAC > 3」が健全な状態とされています。顧客1社を獲得するために投じた費用対効果を明確にし、成長に向けた投資の適正化を図れる点が大きな利点ですが、獲得チャネルごとの回収期間まで加味しないと一時的なコスト高を見誤るリスクがあるため、数値の解釈には注意を払う必要があります。
リード獲得数・MQL数・SQL数
マーケティング活動によって獲得したリードの総数、マーケティング適格リード(MQL)、営業適格リード(SQL)の数です。各段階の転換率を測定し、ボトルネックを特定します。マーケティングから営業に至る案件創出パイプライン数や案件フェーズごとの通過率を精密に追えるメリットがあるものの、量の確保に偏重するとターゲット外の質の低い案件が増え現場を疲弊させる恐れもあるため、数値の評価には注意が必要です。
トライアル転換率
無料トライアルから有料契約への転換率です。SaaSビジネスの成長において極めて重要で、プロダクト体験とオンボーディングの質を測る指標となります。
サンフランシスコを拠点とする投資会社ICONIQ Growthによる2026年の調査によると、BtoBソフトウェアにおける無料トライアルおよびPoCからの転換率の中央値は約50%に達しています。このデータからもわかる通り、適切な転換率を把握・向上させることは、見込み顧客がプロダクトの価値を十分に実感できているかを測る強力な手段となります。
【参考サイト】https://www.iconiq.com/growth/reports/state-of-go-to-market-2026
一方で、単にトライアル登録のハードルを下げすぎると、購入意向の低いユーザーが増えて転換率が低下するリスクもあります。そのため、数値の高低だけで一喜一憂するのではなく、流入経路や顧客属性、プロダクト内の利用状況、オンボーディング完了率なども併せて多角的に分析することが不可欠です。
NPS(Net Promoter Score / 顧客推奨度)
顧客がどの程度そのサービスを他者に推奨するかを数値化した指標です。顧客満足度と将来的なチャーンリスクを予測する先行指標として活用されます。既存顧客の推奨度や長期的なファン化の度合いをロイヤルティとして可視化できるのが強みである一方、定性的なスコアであるための高いからといって必ずしも即座の継続やアップセルに直結するわけではないため、数値の取り扱いには留意しなければなりません。
SaaSのマーケティング戦略の立て方
SaaSのマーケティング戦略の立て方の流れを5ステップに分けて紹介します。
ステップ1:環境分析で自社と市場を把握する
SaaSのマーケティング活動において初めに取り組むべきステップが、自社とその周りの市場の現状を知ることです。自社が今どのような環境に置かれていて、市場ではどういった傾向があるかを把握することが、効果的なマーケティング戦略を作ることにつながります。
はじめに、外部環境と業界の構造を把握する分析として、以下のような分析方法を活用しましょう。
・3C分析(Customer / Company / Competitor)
市場(顧客)、競合他社、自社の3つの軸で外部環境と業界の基本構造を把握します。この分析では、顧客の課題変化と、既存のライバル製品や代替手段としてどのような製品が存在しているかを整理します。
・5Forces分析(ファイブフォース分析)
業界の収益性と競争の激しさを分析します。「新規参入や代替品は、どの程度の影響を与えるか」や「買い手の交渉力」などを評価し、自社が参入・拡張すべき市場の健全性を確かめます。
次に、自社の強みと競争優位性を特定する分析として、以下のような分析方法を利用しましょう。
・VRIO分析(Value / Rarity / Inimitability / organizaiton)
自社の経営資源(機能・データ・顧客基盤など)の強みを評価します。
「機能の有無」のみならず、他社が模倣できない「独自性」のあるデータ、使いやすさ(UX)、支援体制などを競争優位として特定します。
・SWOT分析(Strengths / Weaknesses / Opportunities / Threats)
内部環境となる「強み」と「弱み」、外部環境となる「機会」と「脅威」を掛け合わせて、戦略を導き出す分析方法です。別名、クロスSWOTとも呼ばれる分析方法です。市場におけるトレンド(機会)と自社のセキュリティ面(強み)を組み合わせて、どこを最優先で狙うべきかという戦略を明確にします。
最後に、ターゲティングと施策への落とし込みには、以下のような分析方法を用います。
・STP分析(Segmentation / Targeting / Positioning)
市場を細分化し、狙うべきターゲット層と自社の立ち位置を決める分析です。企業規模や業界別に市場をセグメント化し、LTVが高く自社が圧倒的勝利を収められるポジショニング(専門特化型など)を決定します。
・4P(4C)分析(Product / Price / Place / Promotion)
マーケティング施策の構成要素を具体化する分析方法です。SaaSのマーケティング活動における視点では、それぞれ以下のような形態となります。
- Product(価値・体験): 機能やUI/UX、カスタマーサクセス
- Price(価格): 無料トライアル、月額/年額のサブスクリプション体系
- Place(チャネル): Webサイト、直販、代理店パートナー
- Promotion(訴求): SEO、Web広告、イベント、展示会
これらの6つの分析方法は、「何を分析したいか」によって最適な分析方法を選択することで、その後のマーケティング戦略に大きく影響を与えます。

ステップ2:中長期の目標を設定する
SaaSマーケティングの目標設定は、3年後の定量的・定性的なビジョンから逆算し、年次・四半期目標(MRR成長率、チャーンレート、LTV/CACなど)にブレイクダウンします。目標は、成長フェーズ(シード、グロース、レイター)に応じて、PMF達成、効率的なスケーリング、市場シェア拡大など、重点を調整することが重要です。
ステップ3:LTVの高いターゲットとペルソナ・ICPの明確化
すべての企業を顧客にしようとすると、メッセージが曖昧になり、誰にも刺さらないマーケティングになります。理想的なペルソナ(BtoBの場合はICP)の設定、BtoB SaaSであれば、複数の購買関係者の洗い出しと、各々に向けたコミュニケーション戦略を立てることが重要です。
そもそも、ペルソナとICPは、どちらもターゲティングにおいて必須となる概念ですが、ターゲットの「粒度」と「視点」が異なるので注意が必要です。
ペルソナ
実際に自社プロダクトの購買決定に関与したり、現場で利用したりする「実在する担当者」を指します。
例)役職・職種、業務上の悩み、年齢、性別
ICP(Ideal Customer Profile)
自社のプロダクトやサービスに最高の価値を見出し、かつ自社にとって最もLTV(顧客生涯価値)が高く収益性をもたらす「理想的な顧客」の事を指します。
例)業界、(従業員数や売り上げといった)企業規模、組織が抱える課題
ペルソナとICPは、その対象、視点、主な活用シーンと役割で比較するとその違いがよくわかります。

SaaSのマーケティング活動をはじめとするBtoBマーケティングや営業において、ICPの解像度を高めることは、CAC(顧客獲得単価)を下げ、LTV(顧客生涯価値)を最大化させるための重要なプロセスです 。
ICPの解像度を高めるプロセスとして、以下のような工程を踏みましょう。
Ⅰ. 顧客データの分析と優良顧客を特定する
自社に存在する顧客データを定量評価し、「どの顧客が自社に最大の成果をもたらしているか」を割り出す工程です。
Ⅱ. 定性インタビューから「背景・文脈」の深掘りをする
定量データだけでは見えない「なぜ買ったのか」「なぜ継続しているのか」という購買心理や背景(コンテキスト)を直接取材をします。これにより、顧客の傾向や顧客が製品にどういったことを求めているかを明確にすることが可能になります。
Ⅲ.自社にフィットする顧客の共通軸を言語化する
顧客の属性(業界、規模、ターゲットなど)を単に言語化するだけでなく、顧客が製品を導入する前の課題についてなども言語化するようにしましょう。顧客の企業規模や業界が異なっていても、抱えている本質的な課題が同じであれば、この課題を言語化するプロセスによって、ICPの解像度を効率的に高めることが可能になります。
Ⅳ. 「Anti-ICP(非ターゲット顧客)」を明文化する
「自社製品を買ってはいけない企業」を選定します。このプロセスがICPの解像度に大いに影響します。チャーンリスクが高い企業や、運用コストが利益を上回る規模の企業は「Anti-ICP(非ターゲット顧客)」に分類しましょう。
ステップ4:カスタマージャーニーマップの作成
顧客が製品を知ってから契約、活用、継続に至るまでの一連のプロセスを可視化します。
製品を認知してもらってから導入・活用してもらうまで、具体的に顧客はどのような感情で、どのような行動を行うのかを想像したり、インタビューやアンケートを実施して策定します。
ステップ5:チャネルや訴求内容を選定する
ターゲットやカスタマージャーニーを元に、適切なチャネルの選定、チャネルに合わせたメッセージングを行います。また、各チャネルのパフォーマンスを定期的に測定し、施策の改善、投下予算の見直しなどを行います。
オウンド施策とペイド施策の違い
数あるマーケティング施策のなかから、自社に適した施策を選ぶためには、まず大枠で「オウンド施策」と「ペイド施策」の違いを理解することが大切です。それぞれ特徴や期待できる効果が異なるため、ここでは二つの施策の主な違いについて整理します。
オウンド施策
オウンド施策とは、自社で保有するメディアのことを指します。オウンド施策は長期的なコストパフォーマンスの向上に貢献します。一度作成したコンテンツは残り続けるため、ストック型の資産として中長期的な集客コストを引き下げます。
また、かかるコストも製作費と維持費(初期運用コスト)のみのため、比較的手を出しやすい施策です。さらに、サイトを訪れた見込み顧客のエンゲージメント向上を図ることができる点も、オウンド施策の特徴です。
オウンド施策では、自社ならではの有益な情報を提供し続けることが可能であるため、ブランドのファンやリピーターを育成しやすくなります。
オウンド施策の多くは、自社メディアであるためフォーマットや表現の制約を受けずに自由度の高い発信が可能です。一方で、成果が出るまでに時間がかかることや、継続的な運用をすべて自社で行う必要があり、人的・時間的コストが発生しやすいといった点で注意が必要です。
オウンド施策の代表例としては、以下が挙げられます。
・導入事例、事例紹介ページ
公式サイトで展開される導入事例紹介や事例紹介ページに掲載する、オウンド施策の代表的なコンテンツです。「自社と似た業界・規模の成功体験」として見せることができるため、確度の高いターゲットに対して高い説得力を提供します。
ペイド施策
ペイド施策とは、費用を払って掲載する広告枠や媒体を活用する施策のことを指します。ペイド施策は即効性と確実なリーチの獲得に大きく貢献します。出稿直後から狙ったターゲット層へ即座にアプローチできるため、短期間での認知拡大やCV(コンバージョン)獲得に適しています。
また、詳細なターゲティング設定やデータ検証(A/Bテスト等)が容易なため、短期間でPDCAサイクルを回しやすい点も、ペイド施策の特徴です。広告のフォーマットや配信手法も多岐にわたり、目的に応じて最適な出稿先を選択できるため、柔軟な戦略設計が可能です。
一方で、掲載を続ける限り継続的な広告費が発生することや、コンテンツが自社の資産として残らない点には注意が必要です。さらに、競合の参入によるCPA(顧客獲得単価)の高騰リスクや、ユーザーに「広告」としてスキップされるなど敬遠される可能性も考慮する必要があります。
加えて昨今の情報収集の手法がGoogle AI Overviewsをはじめとする生成AIに以降したことで、ブラウザを介した広告が目に触れる機会が激減していることや、meta広告やGoogle広告などでは購買意図の薄いリードの流入が増え、CPAが高騰している状況にあることも理解しておきましょう。
ペイド施策の代表例として以下のようなものが挙げられます。
・マスメディア広告(テレビCM、ラジオCM、新聞広告、雑誌広告)
最も伝統的なオフラインペイド施策です。年代や性別を問わず幅広い層へ一気にリーチできるため、認知拡大やブランドイメージの構築において非常に強力な手法です。
・インフルエンサーマーケティング(有償PR投稿依頼)
近年のSNS普及に伴い主流となったペイド施策です。特定のインフルエンサーが持つフォロワー層を活用することで、狙ったターゲットへ商品の魅力をダイレクトかつ的確に伝えることができます。
次の項目では、SNSマーケティングを含む、SaaSマーケティングの主な施策14選を紹介しています。併せてご覧ください

主なSaaSマーケティング施策14選
ここでは、主なSaaSマーケティング施策14選をご紹介します。
1.SEO(検索エンジン最適化)
SEOは、検索エンジンから継続的に質の高いトラフィックを獲得するための基本戦略です。検索行動の背後には明確な課題や情報ニーズがあるため、獲得できるリードの質が高い傾向にあります。また、一度上位表示されれば長期的に安定したトラフィックが得られ、CAC削減に大きく貢献します。
近年は、生成AIの普及により、経験・専門性・権威性・信頼性(E-E-A-T)に基づいたコンテンツの価値が一層高まっています。実体験や専門知識に基づく独自性の高いコンテンツ制作が重要です。
2.コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングは、有益な情報提供を通じて顧客との信頼関係を構築し、購買決定に影響を与える戦略です。ブログ、ホワイトペーパー・eBookなどを活用して、導入事例業界トレンド・課題解決のヒント・ベストプラクティス・製品活用法など、ターゲット顧客が求める情報を定期的に発信します。
3.Web広告(リスティング・ディスプレイ)
即効性のある施策として、Web広告は重要な役割を果たします。リスティング広告(検索連動型広告) 、ディスプレイ広告、動的リターゲティングなどが代表的な施策です。
関連記事:ランディングページ最適化(LPO)とは?効果的な手法13選とおすすめツールを紹介
4.SNSマーケティング(LinkedIn・X・Facebook)
SNSは、ブランド認知度の向上、コミュニティ構築、顧客とのエンゲージメント強化に活用できます。LinkedIn、X(旧:Twitter)、Facebook広告 などを活用し、自社製品のターゲットとなる業種や役職、興味関心を持つユーザーに情報を届けます。製品情報だけでなく、業界の最新動向やノウハウ、導入事例、ウェビナー情報などを継続的に発信することで、見込み顧客との接点を増やせます。また、SNS広告を組み合わせれば、ターゲットセグメントを細かく設定し、潜在顧客へ効率的にアプローチすることも可能です。
5.動画配信(Youtube・TikTok)
動画コンテンツは、製品の価値や使い方を直感的に伝える最も効果的な手段の一つです。YouTube、TikTok活用によって若年層や新しい顧客層へのアプローチに有効です。また、動画コンテンツと言っても、プロダクトデモ動画、ハウツー動画、顧客インタビュー、製品発表会、ウェビナーアーカイブなど、様々な種類がありますので、自社製品に合ったコンテンツを活用することがおすすめです。
近年では、TikTokインフルエンサーを起用したマーケティングも普及しています。ただし、インフルエンサーマーケティングでは、誤った情報や誤解を招く表現が企業の信頼を損なうおそれがあるため、正確で適切な情報発信を徹底することが重要です。
また、2023年10月1日から、広告であることを隠したステルスマーケティングは景品表示法違反となりました。インフルエンサーを起用する際は、広告であることを明示するとともに、虚偽・誇大表現を避けるなど、消費者に誤解を与えない表示を心がけましょう。
【参考記事】令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。
6.動画広告(テレビCM、タクシー広告など)
ブランド認知度を短期間で大きく高めたい場合、マスメディアを活用した動画広告が効果的です。テレビCMであれば、特定の時間帯や番組を選ぶことで、ある程度のターゲットを絞った上で認知拡大を行えます。タクシー広告では、ビジネスパーソンへのリーチに優れており、BtoB SaaSとの親和性が高い媒体です。
7.メールマーケティング・マーケティングオートメーション(MA)
獲得したリードを育成し、商談につなげるための重要な施策です。ダウンロードした資料の内容に応じて、関連性の高い情報を段階的に提供します。行動スコアリングと組み合わせ、購買意欲が高まったタイミングでセールスにパスします。
また、セグメントを業種、企業規模、行動履歴などに基づいて細かく設定することで、それぞれに最適化されたメッセージを配信することも可能です。
8.ウェビナー・オンラインイベント
専門知識の提供とリード獲得を同時に実現できる効果的な施策です。製品デモ、業界トレンド解説、課題解決セミナー、顧客事例紹介など、カスタマージャーニーなどウェビナーにも様々な種類があります。ライブ配信後も録画をオンデマンドで提供することで、リード獲得ツールとして長期的に活用できます。
9.既存顧客からの紹介プログラム
既存顧客からの紹介は、獲得コストが低く、質の高いリードが得られる効果的な手法です。紹介プログラムは、紹介者と被紹介者の両方にメリットがある仕組みを作ることが重要で、割引、クレジット付与、限定機能へのアクセスなど、自社サービスに適したインセンティブを設定します。
高いNPSスコアを持つ顧客は紹介意欲も高い傾向にあります。カスタマーサクセス活動と連動させ、満足度の高い顧客に積極的に紹介を促すことで、よりリード獲得にも繋がりやすくなります。
10.パートナー(代理店)からの紹介
販売パートナーを通じた販売は、リーチの拡大と営業効率の向上に貢献します。コミッション構造、サポート体制、トレーニングプログラムなど、パートナーが積極的に販売したくなる仕組みを整備します。
PLAINERのようなツールを活用すれば、パートナー企業(代理店)の営業担当者が商談時に製品デモを簡単に実施できる環境を提供できます。営業資料だけでなく、体験型のコンテンツを共有することで、パートナー経由の受注率が向上します。
12.ABM(Account-Based Marketing / アカウントベースドマーケティング)
ABMとは2003年に米国のITサービス・マーケティング協会であるITSMAが提唱した比較的新しいマーケティング理論です。 【参考サイト】https://itsma.com/
特定の重要顧客企業をターゲットとして、カスタマイズされたマーケティング活動を展開する手法です。売上インパクトが大きく、自社製品との適合性が高い企業をターゲットリストに選定します。各企業の課題や状況に合わせて、カスタマイズされたメッセージを作成し、Linkedinのメッセージや、手紙などの手法を通じて届けます。
13.LLMO(Large Language Model Optimization / 大規模言語モデル最適化)
LLMOとはChatGPT、Gemini、Claude、Perplexity、GoogleのAI検索がなどが回答生成する際、自社・自社サービス・自社コンテンツを「正しく理解し、情報源として採用し、引用・推奨してくれる確率」を高めるSaaSマーケティングにも有効な手段です。
また2023年に米国 プリンストン大学の研究者たちが体系化した論文を発表した一方で、まだ未知の部分が多い分野です。
加えてAIが構造化されたデータを好む傾向があることから、表組や整理された一次情報などの記載で参照される確立が上がるとされています。
【参考文献】GEO: Generative Engine Optimization
14.展示会
展示会とは、BtoB、BtoCを問わず実施されます。BtoBの場合、企業が自社製品やサービスを他社へアピールし、商談や新規取引先を獲得するための重要なイベントです。成果を出すには、自社製品やパンフレットといった備品を不足なく揃え、集客導線を意識したブース構築などの入念な準備が欠かせません。会期中の商談だけでなく、事前の集客から会期後のフォローまで一貫して計画することが重要です。
併せて読みたい記事:【SaaS企業向け】展示会出展の準備・運営ポイント、おすすめツールを紹介
【成長フェーズ別】SaaSマーケティング施策の優先順位
事業の成長フェーズごとのSaaSのマーケティング施策の優先順位と効果的な施策内容について紹介します。
SaaSマーケティングで優先すべき施策は、事業の成長フェーズによって異なります。
サービスの立ち上げ直後から広告や認知拡大に多額の予算を投じても、製品が市場のニーズに合っていなければ、継続的な成長にはつながりません。一方で、一定の顧客を獲得した後も、創業者による営業だけに頼っていると、事業を大きく成長させることは困難であるため、フェーズに即した戦略の策定と戦術の実行が重要です。
シード〜アーリーステージ:PMF達成とリード獲得
最優先事項:プロダクト・マーケット・フィット(PMF)の達成
この段階では、製品が市場のニーズに本当に応えているかを検証することが最重要です。マーケティングに大規模投資する前に、少数の顧客で確実に成果を出せることを証明します。広告によって多くの見込み客を集めるよりも、少数の顧客と直接対話し、製品や訴求内容を改善していくことを優先します。
効果的な施策として、以下のようなものが挙げられます。
効果的な施策
- コンテンツマーケティング(ブログ、SEO):長期的な資産構築
- 創業者営業:直接対話を通じた顧客理解の深化
- 既存顧客からの紹介:満足度の高い顧客からの自然な広がり
- 無料トライアル:製品自体をマーケティングツールとして活用
このステージでは、コンテンツマーケティングも有効ですが、すぐに大きな成果が出るとは限りません。そのため、顧客との対話を通じて、誰にどのような価値を届けるのかを明確にすることが大切です。
グロースステージ:スケーラブルな成長基盤の構築
最優先事項:再現性のある顧客獲得チャネルの確立
PMFを達成したら、効率的かつ予測可能な顧客獲得メカニズムを構築します。このフェーズでは、創業者や担当者個人の営業力頼みの戦術を脱却して、安定してリードや商談を獲得できる状態を目指します。
効果的な施策として、以下のようなものが挙げられます。
効果的な施策
- SEO・コンテンツマーケティングの本格化:持続的なリード獲得源
- Web広告(リスティング、ディスプレイ):スケーラブルな獲得チャネル
- マーケティングオートメーション:リード育成の効率化
- ウェビナー・オンラインイベント:質の高いリード獲得
- 紹介プログラムの体系化:口コミの仕組み化
施策の数を増やすだけでなく、チャネルごとのリード獲得単価や商談化率を確認することで、成果を再現できる施策へ予算を集中させましょう。
レイターステージ:ブランド確立と市場シェア拡大
最優先事項:市場リーダーとしてのポジション確立
この段階では、カテゴリーリーダーとしての認知度を高め、市場シェアを拡大します。また大企業への営業や代理店経由の販売など、新たな顧客層や販売経路の開拓も進めます。
効果的な施策として、以下のようなものが挙げられます。
効果的な施策
- ブランドマーケティング(テレビCM、タクシー広告等):認知度の飛躍的向上
- ABM(アカウントベースドマーケティング):大型案件の獲得
- パートナープログラムの拡大:間接販売チャネルの強化
- カスタマーコミュニティの構築:エンゲージメント強化と口コミ促進
- 海外展開:新市場への進出
レイターステージでは、これまでのステージと比べて施策の規模が大きくなる傾向があるため、どの施策にどの程度の予算やリソースを投入するかが重要です。また施策に関わる人や部門が増えることで、コミュニケーション不足がマーケティング活動の失敗につながる場合もあります。そのため、関係者や他部門との連携をこれまで以上に密にし、認識をすり合わせながら施策を進めましょう。
本記事の「SaaSのマーケティング活動でよくある失敗」では、陥りやすい失敗例とその対策についても紹介しています。併せてご覧ください。

各ステージの境界は、企業規模や売上だけで明確に決まるものではありません。PMFの達成状況、顧客獲得方法の再現性、解約率などを確認し、自社の課題に合った施策を選ぶことが大切です。
SaaSのマーケティング活動でよくある失敗
SaaSのマーケティング活動においてよくある失敗とその対策を紹介します。
ターゲットが不明確のまま、施策を実行してしまう
「すべての企業が顧客になりうる」と考え、ターゲットを絞らずに施策を展開してしまうケースです。メッセージが誰にも刺さらず、獲得したリードも質が低くなります。セールスチームは不適格なリードの対応に時間を取られ、効率が悪化します。
対策としては、製品におけるターゲットやペルソナを明確に定義します。「誰をターゲットとしないか」を決めることも重要です。小さな市場から始めて、成功パターンを確立してから拡大します。
短期的な成果を求めすぎてしまう
SEOやコンテンツマーケティングなど、長期的な施策に十分な時間を与えず、すぐに効果が出ないと判断して中止してしまうケースです。短期的な施策(広告など)だけに依存すると、CAC(顧客獲得コスト)が高止まりします。また、市場環境の変化に脆弱な構造になります。
対策としては、短期施策と長期施策をバランスよく組み合わせます。SEOやコンテンツマーケティングは、最低でも6ヶ月から1年の期間で成果を評価します。短期的なKPI(トラフィック、記事数)と長期的なKPI(オーガニック経由のCV数、LTV)の両方を設定し、段階的な成長を追跡します。
広告を出稿したものの、CPAが合わない
広告から顧客を獲得できているものの、獲得コストが高すぎてビジネスとして成立しないケースです。LTV(顧客生涯価値)を上回るコストで顧客を獲得すると、成長するほど赤字が拡大します。「売上は伸びているが利益が出ない」という状況に陥ります。
対策としては、まずLTVを正確に算出し、許容できるCPA(顧客獲得単価)を明確にします。理想的には「LTV > CAC × 3」の関係を目指します。ランディングページの最適化やABテストを継続的に実施し、CVRを改善します。必要に応じて、広告以外のチャネル(SEO、紹介など)の比重を高めます。
サイトへの流入は増えても、CVしない
広告やSEOでトラフィックは獲得できているのに、資料請求やトライアル登録などのコンバージョンに繋がらないケースです。流入数を増やすことに注力しても、CVしなければ意味がありません。マーケティング投資の効果が最大化されず、機会損失が発生します。
対策としては、流入キーワードやチャネルとランディングページの内容に一貫性があるか確認し、ページの読み込み速度、モバイル対応、CTAの配置なども見直しましょう。PLAINERのような製品デモツールを活用し、訪問者が製品価値を具体的に理解できる体験を提供することで、CVR向上が期待できます。ヒートマップやユーザーテストで離脱ポイントを特定し、改善を重ねることも重要です。
自社サービス独自の価値を伝えられていない
競合との差別化ポイントが明確でなく、「機能一覧」や「汎用的なメリット」だけを訴求してしまうケースです。顧客は「なぜこのサービスを選ぶべきか」を理解できず、価格だけで比較されてしまいます。ブランド価値が構築されず、コモディティ化します。
対策としては、自社独自の価値提案(UVP: Unique Value Proposition)を明確に言語化し、「誰の、どんな課題を、どのように解決するのか」を具体的に示します。顧客事例を通じて、実際の成果やユースケースを紹介する他、製品の機能ではなく、顧客が得られる価値や変化にフォーカスしたストーリーテリングを行いましょう。
測定や分析を充分に行えていない
マーケティング施策を実施しているものの、効果測定が不十分で、何が機能しているのか分からない状態です。データに基づかない意思決定になり、効果の低い施策に投資を続けてしまいます。改善サイクルが回らず、競合に遅れを取ります。
対策としては、Google AnalyticsなどのWeb解析ツールを適切に設定し、コンバージョンまでの経路を可視化します。各施策のROIを定期的に算出し、投資配分を最適化します。週次・月次でレポートを作成し、チーム全体でデータを共有し、PDCAサイクルを回すようにしましょう。
マーケティングとセールスの連携が取れていない
マーケティング部門が獲得したリードをセールス部門へ引き継ぐ際、「獲得したリードの温度感が低い」、「獲得したリードへの対応が十分でない」といった両者の間で責任の押し付け合いが発生するケースです。これは、マーケティング部門がMQL(マーケティング成果リード)の「量」のみを評価指標としてしまい、セールス部門が受注につなげられない質の低いリードを大量に送ってしまうことで起こります。主な原因としては、「集客」と「受注」を別々の組織による独立した業務として捉えてしまうことや、部門間のコミュニケーション不足が挙げられます。
対策として、マーケティングとセールスが共通の目標を設定することや、「MQLからSQLへ移行する基準」を明確にすることが効果的です。また、週次や月次の定例会議を通じてリードの品質に関するフィードバックを双方向で行うなど、日頃から密なコミュニケーションを心がけることが重要です。
顧客の声をコンテンツや施策に活かせていない
現場にあまり出ないマーケティング担当の感覚や推測だけで LPのコピーや広告クリエイティブを制作した結果、実際の顧客が抱えるリアルな課題や導入理由との間にズレが生じるケースです。特に「実際に触れてもらわなければ価値が伝わりにくい」無形商材を扱うSaaS業界において、製品を利用している顧客の声は極めて貴重な情報となります。
対策として、カスタマーサクセスや営業に寄せられた解約理由や問い合わせ内容の分析、既存顧客との定期的なミーティングの実施などを通じ、徹底的に「顧客の生の言葉」をマーケティング施策へ反映させる仕組みを作りましょう。
既存顧客へのアプローチがおろそかになる
予算やリソースのすべてを新規獲得施策に割り振ってしまい、既存顧客向けのマーケティング(イベント開催、機能改善の周知、活用事例の共有など)が後回しになっているケースです。これにより、SaaS事業の収益性を左右する重要指標である「NRR(売上維持率)」が向上しにくくなります。
対策として、マーケティングチームの役割に「カスタマーマーケティング」を組み込むことが有効です。ユーザーコミュニティの運営、顧客事例の発信、既存顧客向けウェビナーの開催などを通じて、信頼関係を深め、アップセルや紹介(リファラル)が自然と生まれる仕組みを構築しましょう。
SaaSのマーケティング活動に役立つツール
SaaSのマーケティング活動で活用したいツールを紹介します。
分析ツール
Webサイトのトラフィック、ユーザー行動、コンバージョンを詳細に分析できる無料ツールです。イベントベースの計測により、ユーザーのカスタマージャーニー全体を追跡できます。SaaSマーケティングでは、どのチャネルから質の高いリードが来ているかを把握するために不可欠です。
ヒートマップやセッションレコーディング機能により、ユーザーがサイト上でどのように行動しているかを視覚的に理解できます。CVRの低いページの問題点を発見し、改善につなげられます。
CRM・営業支援ツール
世界最大のCRMプラットフォームです。リードから商談、受注までの営業プロセス全体を管理し、マーケティングとセールスの連携を強化します。大規模な組織や複雑な営業プロセスに対応できる拡張性が特徴です。
無料から利用できるCRMです。マーケティング、セールス、カスタマーサービスの機能が統合されており、中小企業に人気があります。直感的なUIで導入障壁が低く、スケールに応じて機能を追加できます。
MA(マーケティングオートメーション)ツール
リード育成、メール配信、ランディングページ作成など、マーケティング活動を統合的に管理できるプラットフォームです。CRMとの連携により、リードから顧客までのライフサイクル全体を管理できます。
Salesforce Account Engagement(旧名称:Pardot)
BtoB向けMAツールで、Salesforceとのネイティブ連携が強みです。見込み客の行動トラッキングやスコアリング機能により、営業活動の効率化に貢献します。
SEO・コンテンツマーケティングツール
競合分析、キーワードリサーチ、被リンク分析、順位トラッキングなど、SEO施策に必要な機能を網羅しています。競合がどのキーワードで流入を獲得しているかを分析し、自社のコンテンツ戦略に活かせます。
Googleの公式ツールです。検索パフォーマンスの確認、インデックス状況の管理、技術的な問題の発見に活用します。無料で利用でき、SEO施策の効果測定に欠かせません。
製品デモコンテンツ作成ツール
ノーコードで製品のインタラクティブな体験型デモコンテンツを作成できる国内唯一のツールです。マーケティングチームが開発リソースに頼ることなく、自社製品の価値を視覚的に伝えるデモを作成できます。サイト・展示会訪問者やメルマガの閲覧者に製品体験を提供することで、CVRの向上や商談化率の改善に貢献します。
関連記事:製品デモコンテンツを作成するのにおすすめの専用ツールとその特徴を紹介

SaaSのマーケティング活動にPLAINERで作成したデモコンテンツを活用しませんか?
今回は、SaaSマーケティングの戦略や具体的な施策、よくある失敗とその対策などを紹介しました。SaaSのマーケティングは、従来型のマーケティングとは異なる戦略とアプローチが求められます。サブスクリプションモデルという特性上、顧客獲得だけでなく、契約後の定着とアップセルまでを視野に入れた長期的な視点が不可欠です。
SaaSマーケティングは一朝一夕で成果が出るものではありませんが、正しい戦略と継続的な改善により、持続的な成長を実現できます。市場環境や顧客ニーズの変化に柔軟に対応しながら、データに基づいた意思決定を続けることが、競争優位の確立につながります。
また、SaaSやクラウドサービス等の無形商材を販売する事業者であれば、製品を体験できるデモコンテンツは、製品の価値や機能の理解促進に大きく寄与するものであるため、CACの低下が期待できます。SaaSであれば、サービスサイト、広告の遷移先のランディングページ、展示会など様々な場面でデモコンテンツが必要とされます。

PLAINERは、誰でもノーコードでソフトウェアを複製・カスタマイズしたデモコンテンツを制作し、顧客への提供とアクセス解析を可能にする国内唯一のサービスです。サービス開始から弁護士ドットコム社/クラウドサイン(導入事例:弁護士ドットコム株式会社)や富士フイルムビジネスイノベーション社(導入事例:富士フイルムビジネスイノベーション株式会社)などの上場企業を含め、先進的なプロダクトを持つSaaS企業を中心に導入され、作成されたデモは15万人以上のユーザーに閲覧されています。プロダクトの画面をキャプチャするだけで誰でも簡単に製品デモを制作できるので、これまで製品デモの制作や管理にかかっていた工数を大幅に削減できます。
SaaS・ソフトウェアの事業者の皆様は、ぜひサービス紹介資料をダウンロードいただくかお問い合わせください。
サービス資料はこちら:https://service.plainer.co.jp/document-request
お問い合わせはこちら:https://service.plainer.co.jp/contact
また、PLAINERの代表取締役CEO 小林が登壇し、PLAINERや製品デモプラットフォームの可能性について紹介しているNewsPicksの動画も公開されています。PLAINERが提供する新しい製品体験について理解を深めたい方は、ぜひこちらをご覧ください。
本編はこちらから: 【売れないSaaS】原因は「体験なき購買」。 成約率を劇的に変える「デモプラットフォーム」 の可能性に迫る
よくある質問(FAQ)
Q. SaaSとは?
SaaS(Software as a Service)とは、インターネット経由で必要な機能を利用するソフトウェアの提供形態のことを指します。近年、月々の支払額が低く抑えられ、導入のハードルが低いこと、ツール導入によって業務効率化や業績向上が望めることなどから、多くの企業で様々なSaaSが導入されています。
Q. SaaSマーケティングとは?
SaaSの普及に伴い、併せて発展したマーケティング活動のことを指します。従来の「売り切り型」から、サブスクリプション型へと変化し、製品の価値提供とカスタマーサクセスを長期的に行うためにSaaS誠意品を活用したマーケティングが行われるようになりました。
Q. SaaS・オンプレミス・SIの違いとは?
SaaS、オンプレミス、SIは、サービスの利用スタイルによって異なります。SaaSとは、インターネット経由で、必要なソフトウェア機能をサブスクリプションで利用する形態です。オンプレミスとは、自社で物理的なサーバーを持ち、自社専用のシステムを構築、および運用する形態です。SaaSに比べ、カスタマイズ性が高く、オリジナル性を保つことができます。SIとは、システムの企画、設計、開発、運用までの全てを業者に受託したサービスを指します。
Q.オウンド施策とペイド施策の違いとは?
オウンド施策とペイド施策は、メディアの所有形態や活用の場が異なります。オウンド施策とは自社で保有するメディアを活用した施策を指し、一方でペイド施策とは費用を払って広告枠や外部媒体を出稿・活用する施策を指します。
Q.SaaSのマーケティング施策にはどのようなものがありますか?
主なSaaSのマーケティング施策として、SEO(検索エンジン)を最大化する基本戦略のほか、Web広告やSNSによるマーケティング方法といった様々な施策があります。どのようなターゲットに、どのように製品を届けるかによって、活用すべき施策も変化するため、これらの施策の特徴やメリット・デメリットを理解し、有効活用しましょう。
Q.SaaSのマーケティングツールにおすすめのツールとは?
SaaSのマーケティングツールは用途や、持っている課題によって様々なツールがあり、それぞれのツールを適切な形で利用することで効果的なマーケティングを行うことが可能です。その中でも、製品デモコンテンツを作成するツールとして代表的なものとして、PLAINERがあります。
製品の魅力を、
伝わる体験に。
PLAINERは、製品デモを通じて顧客体験を変革します。
まずはご相談ください。
